「自動車販売会社の販売店の男性店長が、うつ病になり自殺したのは、長時間労働が原因」などとして、遺族が同社に1億円を超える損害賠償を求めた訴訟について、平成30年1月17日、千葉地裁で和解が成立しました。
この事案については、平成29年6月に、「男性店長は、部下の仕事を自宅に持ち帰っており、十分な休息が取れなかった様子が推認できる」などとして、所轄の労働基準監督署が労災認定していました。
遺族側の代理人弁護士によると、男性店長は、平成27年3月に開店した販売店の店長で、開店準備を含めた同年1~6月の時間外労働が最も多い月で87時間に上っていたそうです。さらに、部下の残業を減らすよう指示され、部下の仕事を自宅に持ち帰るなどしていたようです。
同年6月下旬から行方不明になり、同年8月には自宅に戻ったそうですが、医療機関でうつ病と診断され、同月に同社を解雇されました。そして、平成28年12月に自殺に至ったとのことです。
和解は、同社が男性店長の自殺について、業務の負担が原因と認めて遺族に謝罪し、解雇を無効とした上で賠償金を支払う内容となっています。
代理人弁護士は、「働き方改革の影響で、中間管理職が部下の仕事を肩代わりしなければならなくなっている状況を改める必要がある」と、問題点を指摘しています。
確かに、残業が減ったとっても、上辺だけのものでは意味がありません。この事案のように、店長などに負担がかかっていたり、持ち帰り残業が行われているといった可能性も見過ごすことはできません。しかし、そのような面までチェックすることは容易ではありません。まずは、企業全体で、長時間労働を是正していく意識を持つことが大事です。
政府が実現に向けて取り組んでいる「働き方改革」では、生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることを重要な課題としています。そして、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しているとのことです。